昼食
「一年目の奴らの実践演習って明日が初なんだったな」
GWの連休明け、初の授業日。……の、昼休み。
今日俺達が取っている授業は、この後の対抗戦を受ければ終わり。その対抗戦に向けての話し合いも含めて、食堂に集まって四人で昼飯を食っていた。
淳史が持参してきてる弁当を頬張りながら、ふと思い出したかのように言った言葉に「そういやそうだな」と返しながら日替わり定食のカツ丼を口にいれる。
ちなみに、母さんが渡した俺の弁当は二限目と三限目の間にもう食べ終わったからすっからかんになっていた。
「初の実践演習とは懐かしいですわね……あの時期はよく解散するかしないかの話題もまだでていましたし」
「それはお前がつっかかるからだろ」
「那智が私にすぐに文句言っていたからではなくて!?」
「はぁ!?俺のせいだっつーのかよレティ!!」
「どっちもどっちだろ!お前等そういう所はそろそろ変われ!!」
レティと俺が立ち上がってつかみかかり合いそうになったけど、食事中に喧嘩すんな!という淳史の一声に渋々と大人しくする。
お互い負けず嫌いなところもあってか、俺とレティのこの言い合いをする関係は一年経っても変わらない。別にレティが嫌いなわけでも仲が悪いわけでもない。だけどなんかもうここまで来たらお互い引くことができなくなってきてる状態で、何かあればすぐに言い合いになっている。
一つだけ小さくため息をついて、さっきの淳史の話に戻す。
「そういやなんで一年目の奴らの話なんだよ」
「いや、別に深い意味はねえよ。さっきの年齢別の授業で一年目っぽいメイド服着た女子に「明日って一年目と二年目の合同の実習で間違いないですよね?」って確認されたからよ」
「メイド服」
「メイド服」
確認も込めて思わず繰り返した言葉に、淳史もその単語を繰り返す。強面の淳史の口から出る言葉としては全く似つかわしくない単語だった。
さっきの授業は年齢別…、通常の学校で小中高に通ってる年齢の奴らがそれ相応の学年の授業を受ける時間で、俺やレティも高二の授業を受けていた。淳史は高三の授業だから……つまり淳史と同い年のメイドがいるらしい。どういうことだ。
いや、でも確か俺達の年齢のところにも今年から執事の服着た奴がいたな……あれももしかしたらそのメイド服の女子と同じチームなのか?
「メイドの方も来られるなんて、本当にこの学院は変わっていますわね…」
「お前がいうな変わってる奴等筆頭レベルの外国金持ち令嬢」
「私が変わっているとは失礼ですわね!」
生まれ故郷の国にも養成学院があるのにわざわざ日本に来るわ、本人曰くすげえでかい財閥の由緒正しきお家柄の貴族らしいのに戦闘学びに来てる奴が通うなんて変わってなくて誰が変わってるっつーんだよ。
…なんて、一年目の頃は頻繁に思っていたけど、一年間通って分かったことは、そういうの結構居る。割と居る。大半は俺みたいな一般人が多いけど、同期、同い年で探せば数人はレティと似たような奴が必ずいるのがこの学院だ。
そう考えてみたらメイドや執事がいるぐらいそんなに変わってないかもしれないけど、これは感覚が麻痺してるからそう思うんだ。やっぱりよく考えてみれば令嬢やらメイドやら執事が魔物を倒すことを学ぶなんておかしいだろ絶対。
ただ、これを口にすればまたレティとの言い合いになりそうな気がして今度は我慢をする。別の話題にしよう。
「……変わってると言えば、俺らの一つ上の代の奴らも結構変わってるよな」
「あぁ、三年目の奴らなぁ…」
「初の実践演習と言われたら、あのチームのことを思い出してしまいますわよね…」
俺、レティ、淳史でうんうんと頷く。
魔物と戦う実戦演習は基本は自分達より一年先に入学した代か、一年後に入学した代との合同で行われる。去年、その例に漏れず俺達も自分達より一年上の代のチームと組んで合同演習をGW明けに行ったが……その組んだチームが問題だった。
「あのチーム…とは、チーム海……のこと、か…?」
「そうそう、俺達が組み合わされたチームな」
「い…いい人たち…だと、思う…が…?」
今まで喋らず、俺とレティの言い合いとかはおろおろとしながら俺達のやりとりを眺めていたフィオナが、ここで話が少し分からなかったのか首をかしげながら聞いてきた。
その反応をみて、俺達三人はああ、と納得した。そういやまだ日本語が拙いフィオナになるべく危害がないように、とあのチームの問題の人物をなるべく近づかせずにいたんだったな。
…あの時から俺達が妙に一致団結出来るようになったから、ある意味あのチームに恩はあるっちゃあるが……。
「フィオナ……チーム海のリーダー、宇美に関してはいい人の域を超えていましたのよ」
「あれはなんつーか…凄かったからな…。日本に来たばかりのお前には刺激が強すぎるからなるべく関わらないようにしていたからな」
レティと淳史がフィオナを諭すように言っているのをみて、全力で頷く。正直フィオナは何が何だか、という感じで相変わらず首をかしげている。
チーム海、俺達の先輩分にあたるチームになるわけで、名前通り海をテーマにしてるのか男女共セーラー調の服を着ていて、能力も全員青を使えた。年齢も俺達とそこまで変わらず、10代後半の四人で構成されていた。
……ここまでは海をテーマにしていること以外は特に代わり映えしないようなチームだけど、そのリーダーが問題だった。
船原宇美、とにかくテンションが高いし基本命令口調でかなりの無茶ぶりをいきなり言ってくる。暴君って訳じゃないが……なんというか、話していると正直疲れるタイプのやつだ。後問題なのはそういうところよりも服。常に水着のビキニかよといいたくなるような軽装をしていて、かなり目のやりどころに困る服装をしていた。あと正直俺が見てきた中で一番でかいと思った。何がとは言わないけど。
あいつの無茶ぶりの指示のお陰で自分の限界を知ったり能力使うギリギリの体力とかも把握出来たことは感謝してるが……。うん、出来ればあまりもう関わりたくないやつだ。
それ以外の三人はかなりまともだったから、フィオナの相手はなるべくその三人にしてもらうことにしていた。
だからフィオナにとってはチーム海はいい人達…で終わっているが、俺達三人は宇美に付き合っていたからそのイメージがどうもできない。
「まあ…なんつーか、俺達は後輩に変なやつらとか思われないようにしたいな」
「ええ、それは同意いたしますわ」
真剣な顔で頷くレティに、だよなと頷き返す。
始めて後輩になる奴らだし、出来れば好印象がいいなとは思う。後輩と言っても、この学院の構成上その後輩がかなり年上とかにもなるけど、それはそれで面白い気もする。
ふと、食堂にかかっている時計を見てみれば昼休みが終わるまであと十数分になっていた。
対抗戦の準備もまだ出来てないし、対抗戦に出るときの組み合わせのオーダーもまだ出せていないからそれを伝えて、急いで昼飯の片付けを始める。
「そういえば、今回の相手はどのようなチームなんですの?」
「あぁ、相手はチーム出雲。八年目のチームだ」